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ユナイテッドアーバンがヤマダ電機テックランド青葉店(敷地)を取得しました。半年ほど前に取得したビバホーム横浜青葉店(敷地)から、わずか200?300mほど西に行ったところです。ビバホームの時も、面白いディールだなと思ってコメントしましたが、まさか第2弾があるとは思いませんでした。売主はまたしても東急電鉄、(土地の)取引単価もほぼ同額です。両取引とも、借地期間終了後の分譲地としてのキャピタルゲインを主目的としているものだと思いますが、保有期間中はリートにとっては管理手間がほぼゼロ、スポンサーにとっては、借地期間満了時に分譲マンションのマーケットが良ければ、開発素地として取得チャンスがあるという、一粒で2度おいしい物件です。取得時点における定期借地権の残存期間が、ビバホームの6年8か月に対して、ヤマダ電機が8年と少し長いですが、想定利回りはビバ3.85%に比べてヤマダ4.26%なので、バランスは取れていると思います。
ここのリートには依然に物件を紹介したことがあって、その時に取得担当者と話をする機会がありました。直近で取得した物件や、取得検討している案件の話などを教えてもらいながら、総合リートであるが故に、1種類のアセットタイプ特化型のリートに価格競争で勝つのは難しいが、特化型よりも取得できるアセットの間口が広いので、きちんとリスク管理をしながら、適切なリターンを得られるものを選別して投資できるのが強みだという話を聞くことができました。(それが故に、持ち込んだ物件に対する評価は渋かったですが。。)
リートの中にはIRでは格好良い方針を謳いながら、実際の取引はスポンサーの意向に左右されるところもある中で、取引の内容からもこういったブレないスタイルを感じとれるのは好感度高いです。


最近あまり気になる案件がないので、いつか触れようと思っていたGビル南青山01について書こうと思います。
この物件の取得時期は、リーマンショックの約半年後の2009年3月ですが、専有単価はこれまでリートが取得した物件で、最高額の坪2,300万(取得価格は64.3億)です。不動産ファンド絶頂期には、一等地の店舗賃料は跳ね上がり、それにつられて商業施設の取引価格も急上昇したため、坪1,000万円超の取引はよく見られました。ただその前提は、高額賃料でテナントが入居しているのはもちろん、中途解約や賃料減額が不可など、固い賃貸借契約で縛られていた取引がほとんどでした。
しかしこの案件は、不動産マーケットが完全にストップしていた時期だったにもかかわらず、稼働率0%でテナントの当てがないまま、リート史上最高額で購入しました。当時、リートの収益予想は月額24,250千円で、B1?2Fの約280坪を、平均87千円/坪でリーシングする前提でした。おそらく1Fを10万円台前半、B1と2Fはその5?7掛程度というイメージでしょう。かつて商業施設の開発を手掛けた時に、たった20mの立地の違いが、店舗賃料に倍以上(もしくは全くテナントが入居しない)の差を生むという、厳しい現実を味わったことがあります。この物件のロケーションは、ガラス張りのプラダで有名な、みゆき通りから70?80mほども背後に位置しているので、この想定にはかなり無理があると思っていましたが、案の定、竣工から3年以上を経過した現在も、B1Fしかテナントが入居していないようです。
CRは取得当時の想定でも4.26%なので、今後もしテナント誘致できたとしても、利回りは低空飛行を続けるでしょう。これがメインスポンサーからの取得なのですから、罪深いディールと言わざるを得ません。。

年度末を過ぎました。最近、リートの資金調達環境が改善してきたのに伴い、取引も活発になってきたような印象があります。2012年にリートが引渡した(予定も含む)取引は、合計約2,564億、件数は78件で、内訳を主要都市別の金額順にみると、以下の通りでした。
都心5区:1,145億 14件
都心18区:571億 21件
その他:400億 19件
福岡市:209億 9件
名古屋市:57億 3件
横浜市:57億 1件
大阪市:41億 3件
仙台市:29億 3件
神戸市:27億 1件
川崎市:16億 1件
札幌市:7億 3件
これを見ると、東京の一極集中を除けば、福岡の強さに目を引かれます。リーマンショック後、証券化されたノンリコースローンの担保物件の売却事例を見る機会がありましたが、マーケットが悪くなった時に、他の都市では物件が全く動かなくなるか、ネット利回りが2桁を突破するのに対して、福岡では地場の事業会社、不動産会社、個人富裕層が存在感を発揮して、ネット利回りが2桁にのる前に取引が成立していました。オフィス賃料が低下している状況については、福岡も他の都市の例外にはなり得ていないようですが、売買マーケットには底堅さが感じられます。

大和ハウスレジデンシャルがカスタリア荒川とカスタリア大森IIを取得しました。カスタリア荒川は、半年ほど前に取得予定だった物件ですが、なぜか取得をキャンセルした経緯があります。売契締結後のキャンセル理由として考えられるのは、資金調達など買主側の事情がほとんどではないかと思います。ただこの物件については、「取得することが困難と考える事由が発見され」てのキャンセルで、どちらかというと、売主側に問題があったと思われるので、どうしたんだろうと不思議に思っていました。
今回、リリースではERに特段の指摘事項はなく、稼働率は前回の92.9%から95.2%に上昇しています。鑑定を見ても18億から18.3億になっているので、少なくとも物件バリューは前回より下落していないように思います。にもかかわらず、価格を見ると、前回の取得予定価格が17億だったのに対し、今回は16.6億と4千万円減額されています。買主にとっては、半年前に無駄にした経費もあるとは思いますが、4千万まではかからないと思いますので、何らかの原因があるのでしょうが、リリースからはそれを推し量ることができません。
そんな中で気になったのは、仲介手数料も前回の4,250万から2,300万に減額されていることです。「取得することが困難と考える事由」を補填するために、売買価格を減額するのはよくわかりますが、仲介手数料まで減額されるというのは、何か仲介業者として責任を問われるような見落としでもあったのでしょうか。ますますこの「事由」が気になるところです。

いちご不動産がCOI富山新桜町ビルを売却しました。ここは地方のオフィス物件を売却していく方針のようです。今年の2月から、実に4件目の売却です。このリートの生い立ちは、クリードが上場させたクリードオフィスREIT(COI)を2008年12月にスポンサー変更する形でいちごが取得し、更に2011年11月にレジリートのFCRを合併しています。この合併時に、含み損の大きいCOIを消滅させ、FCRを存続会社として、オフィスの簿価を切り下げて負のれんを作りました。特に地方オフィスには、COIでの取得価格の半値くらいまで簿価を切り下げたものもあります。
以下は、今年売却した4件の売買概要ですが、ざっくり稼働率が70-85%程度の状態で、売却CRは7-10%必要という状況で、地方のオフィスマーケットの厳しさが感じられます。レジに比べて賃料変動リスクが大きいこともありますが、今は地方オフィスのプレイヤー数が圧倒的に少ないことが主要因でしょう。需給ギャップがもろに出てしまっている感じが否めません。
(※1)COI取得時?2011.10の平均、(※2)2010.11?2011.10

物件名 | COI取得価格(千円) | 平均CR(※1) | 平均稼働率(※1) | いちご取得価格(千円) | 直近NOI(※2) | 直近稼働率(※2) | 売却価格(千円) | 売却CR |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
仙台一番町ビル |
2,480,000 |
5.11% |
87.5% |
1,384,000 |
103,341 |
87.1% |
1,191,600 |
8.67% |
カーニープレイス金沢駅前 |
1,071,000 |
4.12% |
75.5% |
533,000 |
38,161 |
70.5% |
550,000 |
6.94% |
COI広島紙屋町ビル島 |
1,709,000 |
4.09% |
81.0% |
885,000 |
70,412 |
84.7% |
715,000 |
9.85% |
COI富山新桜町ビル |
708,000 |
5.60% |
74.0% |
367,000 |
33,011 |
70.5% |
333,000 |
9.91% |